F-15の開発当初装備されていた中射程ミサイル(MRM)はAIM-7E/Fスパローで、その後M型が開発されて配備された。AIM-7ファミリーはセミアクティブレーダー誘導方式の空対空ミサイルで、目標で反射した母機のレーダー波をミサイルが受信して誘導を行う。このため、発射から命中までの間目標を照射し続ける必要があり、その間の母機の機動はレーダーアンテナの首振り角や目標との位置関係によって著しい制限がある。

AIM-120は1990年末からアメリカ空軍に配備が始まったAIM-7の後継ミサイルで、現在ではMRMの主流となっている。初期〜中間誘導を慣性航法で、終末誘導をミサイル搭載レーダーによる自律航法で行う事により、Fire-and-Forget、いわゆる「撃ちっぱなし」が可能となっている。目標を捕捉して発射した後母機の機動に制限が無いため、AIM-7と比べて戦術上のメリットには計り知れないものがある。

三菱電機で開発され1999年に正式採用された99式空対空誘導弾AAM-4も、AIM-120同様「撃ちっぱなし」可能な中射程ミサイルだ。航空自衛隊ではAAM-4の開発と並行して少数のAIM-120Bも導入しており、評価運用を行ってきた。これら新世代MRMを運用するF-15J/DJには改修が施されており、新田原基地の飛行教導隊に配備されているF-15DJ数機と、岐阜基地の飛行開発実験団に配備されている数機、F-15J能力向上試改修機、そしてIRAN明けのJ/MSHIP数機に運用能力が付加されている。

これらの改修機には、目立った外見上の差異はない。唯一目視可能な識別点は、胴体下側面にあるステーション３、４、６、７の４つのAU-106/Aミサイルランチャーにある。まずは写真を見ていただきたい。左右それぞれ、上が非改修機で下が改修機となっている。このランチャーには、目標の位置情報をアンビリカルコードを介してミサイルに伝達する機能があり、中央部の黒い円形の穴がAIM-7用のアンビリカルコネクタである。非改修機ではその前方に黒い四角形のプレートがあり、改修機ではその位置にAIM-120/AAM-4用のアンビリカルコネクタが追加され、プレートは前方に移設されている。このコネクタは通常白いカバーで覆われており、この有無が改修機と非改修機の主な識別点となっている。

また、ランチャー前方のミサイル保持リングにも識別点がある。この半円形の保持リングはある程度自由に回転するようになっているが、リング中央部にワイヤが張られており、ミサイル射出でリングが突出する時にワイヤの張力で保持リングが正対するようになっている。非改修機の写真で、保持リング中央から後方に向かって見える黒い溝にワイヤが通っている。

理由は不明だが、改修機ではこのワイヤが撤去されており、後方に延びる溝が無くなっている。F-15の開発時、発射したMRMが翼下のドロップタンクと接触してしまうという問題があったが、運用手順の改善で解決されたという経緯がある。もしかしたら、ワイヤの撤去はそれと関係があるのかもしれない。ともかく、このワイヤがなくなったせいで、前方保持リングは野放し状態のように見える。実際、改修機をよく見ると、前方ステーション３、７の保持リングは機軸とほぼ並行になるほど寝てしまっていることがある。

保持リングの角度だけでは改修機の識別は判りづらいかも知れない。追加されたアンビリカルコネクタも、よほどアップで見ない限り識別は容易ではないが、 これらの識別点は航空自衛隊のF-15を見る時の注意点として、気をつけていると面白いと思う。